「成年後見制度」研修会特集 知的障害のある子供達が、親亡き後に置かれる境遇を救済する制度として重要な意味を持つ「成年後見制度」について、特定非営利活動法人「ひだまり」の主催で研修会を実施しました。 講演の内容をまとめましたのでご覧下さい。 【実施日】 平成15年7月20日(日) 10:00〜12:30 【会 場】 「あけぼの園」食堂 【講 師】 (1)日本社会福祉士会千葉県支部 成年後見センター 「ぱあとなあ千葉」 武岡福太郎講師、 小川裕二講師 『成年後見制度の開始の要件及び効果について』 (2)父の樹会会員 橋爪八重子講師 『成年後見人の申請をしてみて』 【内 容】 (1)『成年後見制度の開始の要件及び効果について』 @知的障害のある方、痴呆性の方、精神障害のある方など判断能力の不十分な方々は、財産管理や身上監護(介護、施設への入退所などの生活に配慮すること)についての契約や遺産分割などの法律行為を自分で行うことが困難な場合が多く、悪徳商法の被害にあう恐れがあります。このような方々を保護し支援するのが平成12年4月にスタートした成年後見制度です。 A従来は、民法に定める禁治産及び準禁治産の制度しかなく、対象者が限定され保護の内容も画一的・硬直的であり、宣告されると戸籍に記載されるので、本人の保護体制が十分とはいえない制度でした。 Bそこで保護が必要な成年者に援助する制度として、新しく作られたのが成年後見制度です。 なにが新しいのかというと、ひとつがンーマライゼーションの確立でありもうひとつが自己決定の尊重です。 この理念と従来からある本人保護の理念とを調和させて作られたのが、民法を改正して創られた成年後見制度です。 Cノーマライゼーションとは、障害者だとか高齢者だとか特別視することなく、普通の人と同じ生活を送ろうという考え方で、欧米では定着しています。 自己決定権の尊重とは、残存能力の活用ともいえます。 たとえ障害があっても人格はあるわけですから、少しでも能力があればその人の自己決定権を可能な限り尊重していこうとする考え方です。 D新法では、従来の禁治産及び準禁治産を廃止して、後見・保佐とし、新たに補助という類型を設けて、今までの準禁治産者よりも軽度の知的障害者や痴呆にも対応できるようにしています。さらに後見人らには本人の身上に配慮する義務があり、この責務に基づいて本人のために取消権や代理権を行使することになります。 従来から批判の強かった戸籍への記載や配偶者後見人制度は廃止しています。 また、後見人は個人だけでなく法人でもなれるようにし、本人一人に複数の後見人を選任できるようになり、後見監督人についても整備されました。 E今回の改正では、自己決定権をより尊重する制度として、任意後見制度についても新法が作られることになりました。 具体的には、予め自分の意思で任意後見人となる代理人を選任し公正証書にした委任後見契約を締結しておき、将来自分の判断能力が低下した時に先に締結しておいた委任契約に基づいて、自己の財産の管理や介護、医療に関する手続きを行ってもらうものです。また、任意後見人は、後見人の職務を監督する後見監督人を家庭裁判所が選任してから代理人としての職務が実施できるようになるので、本人も安心して財産管理等を任せられるわけです。 なお、この任意後見契約の内容は、自動的に登記されることになっています。 (2)『成年後見人の申請をしてみて』 父の樹会会員の橋爪八重子さんから、自分の末娘の恵子さんのために成年後見人申請手続きを実際に行った時の体験談を発表していただきました。 @平成14年10月1日に家裁に出向き民事相談窓口で申請書類を受け取り、千葉法務局で成年後見人登記事項証明書を受け取った後、必要書類を揃えて10月31日に家裁窓口に提出しました。その後、家裁での事情調査及び記載事項の確認を受け、鑑定医の鑑定のために平成15年4月9日から4月16日の間に3回に分けて診察検査をした後、診断書が家裁に送られ、平成15年5月20日に後見人宛に後見開始審判謄本が送付され後見手続きが終了したそうです。 A後見人には父親が選任され、総費用が約70,000円掛かったこと。審判書には代理権の内容が記載されており、身分証明書を見せて代理権を行使すること。鑑定医となった先生の言葉として、鑑定にはかなりの労力を必要とすることから年間2回が引き受ける限界であると言われた。従って、鑑定をお願いする先生とは常日頃から懇意にしているほうが良いとのお話がありました。 B橋爪さん本人の言葉として、3人いるお子さんそれぞれに人生があるので、末娘の恵子さんのことが決して負担とならないようにしてあげたい。 成年後見をする期間が長くなるので父親がこのまま健康である保障はないので、是非とも法人後見人が必要となることを切々と訴えられました。 また、橋爪ご夫妻の厚意で、手続きに使った関係書類を「ひだまり」で保管させて頂くことになりましたので、興味のある方は事務局までお申し出ください。 (3)質疑応答 『この制度にかかる費用と報酬について教えてください。』 一般的には弁護士は高く、司法書士、社会福祉士の順で安くなっているようです 『後見人の取消権は善意の第三者に対抗できますか?』 取消権の行使により法律行為自体が無効となるので善意の第三者にも対抗できます。 その他、活発な質問が出されましたが 本人保護の観点から非常に良い制度であることが改めて判りました。 【青木会長より】 会長からは、痴呆性老人の成年後見は5〜6年で終わることが多いと考えられるが、知的障害者の場合は50年以上の後見が必要となるのが決定的に違っている。従って、負担も相当大きくなり兄弟等に押し付けるのでは解決できない問題であるので、法人後見制度の必要性が高くなってくると考えられる。 そして、生存する期間が長いということは後見する期間も長くなるということなので、財産的な問題も大きくなるとの警鐘が出されました。 事務局より 今回の研修会は、親亡き後の子供の幸せのために、NPO法人「ひだまり」が法人後見人制度の受け皿となっていく必要があると痛感させられるものとなりました。 なお、「成年後見制度」についてご質問のある方、資料をご覧になりたい方はお気軽に事務局までお問い合わせください。 |