TOPひだまり便り>17号(平成18年12月号)

 親亡き後は親あるうちに ひだまり事務局長 田川正浩
 10月22日にひだまり主催で、成年後見セミナーを開催しました。テーマは、「障害者のよりよい生活と後見」で、「親亡き後は親あるうちに」がサブタイトルでした。

 講師はPACガーディアンズ(PACG)の佐藤理事長と名川副理事長にお願いしました。PACはProtection and Adovocacy Chibaの略称で、障害のある人の成年後見と支援を中心に権利擁護活動に取り組んでいます。

 佐藤氏は弁護士であり法政大学に、またな側氏は筑波大学に在籍しておられ、法人として障害のある方の成年後見等を支援する活動を進めておられます。ひだまりは趣旨に賛同し、千葉支部として活動を開始しました。今回のセミナーが第1歩です。そのセミナーの内容を感想も含めながらご紹介します。

佐藤講師 「成年後見制度へのPACGの考え方」
 親亡きあとの障害者の財産管理や契約行為、身上監護などを考えると、成年後見人への期待がクローズアップされるが、成年後見人はスーパーマンではなく、障害者本人の生活すべての面倒を見れるものではない。

 また、現在後見人の担い手である”三士業”と言われる弁護士、司法書士、社会福祉士の人達は専門分野には強くても障害のある人の特徴や思いへの理解に乏しい場合が多い。

 今年、障害者自立支援法がスタートしてこの制度への関心が広がってきているが、厚生労働省は施設利用契約などの際の保護者の代行を認めているので、まだまだ慌てて成年後見人を立てる必要はないと言える。
 ただ、いつかは必要になってくるものなので、親が元気で判断能力があるうちに余裕をもって後見人を見つけることが大切である。

 親が元気なうちは性急に後見人の申し立てをすることより、本人のことを良く理解してくれる人、信頼できる人を時間をかけて作り出すことが大事である。

名川講師 「コミュニティフレンドの役割」
 障害のある人の後見支援は(老人に比べて)長期間にわたるという特性がある。

 親よりも確実に長生きする障害者には、権利侵害や財産管理などの有事に対応する「やや遠い関係」の成年後見人とともに、日常生活の相談相手となるような「近い関係の助言者」「もう少し身近な助言者」としてのコミュニティフレンドの存在が必要だと考えている。

 イメージとしては”まちの中の友だち”で、居宅介護事業で契約に基づきホームヘルパーが仕事として行う支援とは違い、友人として時々会って遊びに行ったり、暮らしのことを一緒に考えたりする人のことである。

 本年10月より千葉県内で7組によるコミュニティフレンド施行事業を開始した。この運動は、カナダやスウェーデンで始められたもので、宇治市社協が類似制度を実施している。

 PACガーディアンズでは、後見に関する相談、成年後見の受任、専門家ではない善意の第三者の後見人やコミュニティフレンドの養成、育成、支援などを通じて障害のある方たちの後見環境の充実に取り組んでいく。


※ コミュニティフレンド (名川講師HP)

※ 宇治市社協(京都府)の類似制度は、敢えて制度に載せることなく事業を進めているため、HPなどには情報はありません。以下は京都府地域支援計画内のPDFより抜粋。
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 <地域の動き/活動事例>
 宇治市社協及びNPO法人宇治市の精神保健福祉をすすめる会かわせみ

コンタクトパーソン(友達交流サービス)

 「職業訓練の日に電話で声かけを行う」
 「グループホームの入居者と交流できるように働きかける」
 「学校帰りの時間を有意義に過ごす」

 このサービスはデンマークやスウェーデンにおいて、「コンタクトパーソン」という事業名で、知的障害や精神障害のある市民を対象に取り組まれてきました。人間らしく暮らすためのお手伝いや自身の回復ということを目指した「マンツーマン方式」です。
 宇治市社協とかわせみでは、高齢者や知的及び精神に障害のある人を対象として、府共同募金会の「先駆・開拓的福祉サービス事業」の配分金を活用し、試行的に実施しています。
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 「親の目が黒いうちは、他人の世話にならない」

 ということを良く聞くことがありますが、これほど無責任な発言はありません。親が元気なうちに、親なきあとの障害者本人の地域生活をサポートしてくれる体制を作り出しておくことが親の責任ではないでしょうか。

 毎日通う会社や施設の同僚や仲間や職員さん、外出や生活を支援してくれるヘルパーさん、いつも気にかけてくれる近所のおばさん、そして本人のことを理解し信頼できる成年後見人、悩みを聞いてくれ一緒に考えてくれるコミュニティフレンド・・・・。

 数多くの他人の世話になれることが、親なき後の「障害者のよりよい生活」に繋がるのだと思います。

 そして、この数多くの人達がそれぞれ連携をとりチームとしてサポートしてくれたら、どんなに心強いでしょう。このチームづくりこそが、親が目の黒いうちにやるべきことだと思います。

 セミナーを終えて ひだまり理事長 小関 茂
 今回はNPOひだまりがはじめて主催したセミナーですが、後援は障害児者の将来を守る父の樹会、そして千葉市手をつなぐ育成会にも協力をお願いし、快くご賛同を得て開催することができました。比較的地味な主題のセミナーでしたが、多数のお父さんを始め育成会からも多くの方の出席をいただき、およそ100名の参加者での開催になりました。

 成年後見に関しては障害児者の将来を守る父の樹会が過去2回実施していますが、時期的に早すぎたのか、関心も薄く今一つ盛り上がりが見られませんでした。今回は制度についての解説は絞っていただき、知的障害の人にはなぜ成年後見が必要なのか、どのような後見が望ましいのかなどの内容になりました。

 千葉市手をつなぐ育成会:久保田会長は
「セミナーの副題〜親亡き後は親あるうちに〜に共感を覚える。兄弟の後見がよいとは一概に言えないし、親の目が黒いうちでも判断が良いとは限らない。我が家では父親後見人になって3年経つが現在は不便なことが多いし、身上監護でやっているのか後見人でやっているのか判らなくなってきている。PACGや多くの人が法人後見に取り組み始めたのは心強い。」
 という感想を述べられておられました。

 このセミナーを通して私どもの呼びかけがこれからのヒントやきっかけになれば幸いです。今回だけでご理解を得るにはまだ不十分と思いますし、機会があれば続編を企画できれば・・・と考えています。

 またコミュニティフレンドの役割を1人でも多くの方に知ってもらい、共感を得られることが運動の発展につながります。興味がある方はひだまりにご連絡ください。
 後見制度の中身や家庭裁判所の手続きなど、疑問があればお気軽にひだまり事務所へ問い合わせて下さい。家裁の申請書なども取り揃えております。


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